本と私と魔法使い

「見ていてどう?…朽ち果てていく友達を見るのは?」


多季は私に囁くように話しかけた。
「千亜…っ!!」

私が叫ぶと千亜は自嘲気味に笑った。


「あれだけわたしは突き放したのに…、いなくなるなんて考えられないの。…馬鹿みたいだけど、もう…」

離してなんか考えられない。

私も知っているその感情は、時々怯えてしまうほど大きくなってしまう。でも、手離すなんてもっと考えられない。

馬鹿だねぇ、そう言った多季を睨む千亜の目には涙が溜まっていた。


「健くんは、あなたなんかの勝手で切り捨てられる存在なんかじゃない!!幸せであるべき人なの」


多季はだぁって、と言葉を甘く伸ばして言う。

「丁度いい適合者だったんだもの。僕は意味のない事はしないよ、今日という日を迎えるためにぴったしのコ、それが彼だっただけ。…僕の願いは、約束も踏み越えたその先にある」



意地悪そうに多季は微笑んで私を見つめて言った。
私の顎を長い指で持ち上げた。


「ねぇ、ざわつかない?あの日の続きをしようじゃないの」