本と私と魔法使い

「秦野!!」

「こんばんは、委員長。…びっくりして、どうしたの?…見当ついてたでしょ?」



柔らかく微笑む様はいつも通りの秦野。ぴしり、と肌にヒビが入る。

もしかして、の見当は確かについていたけれど、現実になってしまえば驚きを隠せない。



「時間がないから、手短にするね」


解放と小さく呟いて、刀を出し斬りかかる。

「ッ…」


刀の重なる高い音が響く。和泉は秦野と戦うことの分の悪さに内心舌打ちをする。

もとが強い上に

「失礼します」

秦野がそう言うと刹那、脚の蹴りが脇腹に炸裂する。しかも咲がこちらを愕然として見ているのだ。
やりにくいことこの上ない。



「優しいね、委員長は。私を傷付けることは咲ちゃんも傷付けてしまうものね。ふたりとも優しくて好きだよ」

でも、と秦野は言葉を区切る。

「優しいのが、今は命取りだよ」


刀を振り落とされるのを避けるがすかさず左足で蹴られて吹っ飛ばされる。



「私は別に何もしたりしない。ただ終わるんだったら眠りたいだけ。一緒に」


叫んだ秦野の声は静かで穏やかだった。

一緒?


「何が…、…ッ!?」


唸るような、地響きな音。地面が共鳴するようにぐらついた。秦野は何かを察知したように行かなきゃ、と呟いて走り出した。

和泉は秦野の後ろ姿を追いかけた。