「毎年来てるんだねー。お母さんってどんな人だったの?」


ちらりと和泉を窺った。

「ふつーの人だったけど」
ふつーって…。


「俺が七歳くらいの時に駆け落ちの途中交通事故で死んだ」

駆け落ち…?!

「付き合ってた人がいたらしいんだけど、父さんと見合いで結婚、前からの人とも続いてて、そこに出来たのが俺。」


さらりと重い事実上を言われ絶句する。

「知らない男との子供を育てるなんて阿呆らしいよな」

私はなんて言えば良いかわからなかった。
和泉にかける言葉を持てるほど人生経験が豊富なわけじゃない。

普通にただ16年間生きてきただけだ。

阿保らしくなんかないよ、
一番言いたい言葉も言えずに消えた。


「あと、海言っていい?」

和泉はアイスコーヒーの氷を噛み砕きながら言った。
私は黙って頷いた。


ー…