彼は少し驚いていたけど、すぐ元に戻って


「せっかく隣に来たのに、音楽なんて聴かないで話そうよ」


こいつはどこまで無神経なのだろうか


こいつが近くに寄るだけで、こいつの声が聞こえるだけで


私は震えが止まらないというのに


つくづくこいつは最低なやつだと思う


自分が抱いた女の顔ぐらい覚えとけよ


「俺の名前は朝倉慎。よろしくね」


名前なんて知りたくないんですけど


心の中でそう毒づきながら


「はぁそうですか…」


表には出さない