季節は巡る
京どくとくの蒸し暑い夏が終り
涼しい風が少し肌寒く感じられる秋の夜
悠輝は一人自室の前の縁側に腰を下ろし
月を見上げていた。
「・・・・烈」
呟くのは愛しかった彼の名前
今はもう、この世には存在しない
「烈、…烈の仇、取れそうにないよ…ごめんね」
この数ヶ月
近藤を初め藤堂らが江戸へと隊士募集へ行った。
そして、伊東甲子太郎らが新撰組に入隊した。
たった数ヶ月
なのに、新撰組はがらりと変わってしまった。
人数が増えたからとかそんな物ではない
空気からして、変わってしまったのだ。
「ねぇ、前から気になってたんだけど
その烈って誰?」
「へ…?」
突然聞こえた声に後ろを振り返る
其処には、よく知った人がいた。
「沖田さん…」
「ねぇ、誰なの?」
彼の名を呼ぶと
沖田は少し不機嫌そうな声で再び問いかけながら
悠輝の横に腰を下ろした。
「烈は、私の婚約者だった人です」
「………」
沖田は何も答えなかった。
ただ、月を見上げている。