愛してる?...たぶん。

「ほんと、結婚ってなんなんでしょうねー」



「うーん…」



ペタリとカウンターに頬をくっ付けたままノロノロと左手を持ち上げれば、ぼやけた視界の先にはキラリと輝くプラチナリング。



「幸せになれるって信じて、神様の前で愛を誓って、同じ家に住んで、同じ名字になって…」



少し細くなった指の関節に辛うじて引っ掛かるソレを見るたび、もう外してしまおう…って思うのに。結局、クルクルと弄るだけ。



「なのに結局、付き合ってる時のが楽で、楽しくて、普通に幸せで、なにもかも上手くいってて…」



「………」



「病める時も、健やかなる時も、ずっと死ぬまで愛してる、って誓ったはずなのに…」



「………」



「浮気されて、離婚届目の前に突き付けられるまでそのことに気付けなくて、挙げ句の果てに引き止めることも出来なくて…」



「………」



「ほんと、僕は………バカヤロー…っぐ、…っぅ……」



「お客さん…」