愛してる?...たぶん。

「……ねぇ、センセ」



「ん?」



「あたし、ね、地元で…ううん。家族に、嫌われてるの」



「そっか」



「こんな顔だから…皆と、お父さんともお母さんとも、お姉ちゃん…とも違うから…あたし、ダメ、だから…皆に嫌われてるの」



「そっか…」



「ん」



彼女の話はこうだった。



昔からモテるせいで女の子達から僻まれ疎まれ、周りにいるのは男ばかりだった。そして姉の彼氏まもが自分に好意を寄せてきて、それに気付いた姉に罵倒され、家族ともギクシャクし、家に居場所をなくした彼女は逃げるように叔父のバー…この学校に来たらしい。



だから“シワシワ”か…。



一息ついた彼女を見つめながら僕は小さく溜め息をついた。



遺伝の法則的には彼女は間違いなく優性…その長い睫毛もハッキリとした二重まぶたも笑った時に出来るえくぼも間違いなく優性だ。でも優性遺伝は“優生”と思われがちだが決してそういうわけじゃない。ただ強い遺伝子なだけだ。そして劣性というのは弱い遺伝子なだけで別に劣っている、というわけではない。でも皆…特に家族とあまり似てないともなれば、皆に嫌われているともなれば、自分は劣っていると思っても仕方がない。



生物教師として彼女の間違った知識を正したい、遺伝の法則について熱く語りたい、と思ったが、今は彼女の話を聞くのが先だ。



「センセ…」



「ん?」



「続き、聞いてくれる?」



「ん」



少しだけ不安げな彼女を見つめながらニコッと小さく笑みを浮かべた僕は、コクリと頷いた。