愛してる?...たぶん。

「もえ先生」



「はい!」



「とりあえず、右に2歩、移動してくれる?」



「はい!」



「あと、」



「はい!」



「目、瞑ってくれる?」



「はい!」



浅野の命令どおりギュッと目を瞑った僕は、これから来るであろう衝撃に備え、グッと歯を食い縛った。



来るなら来い!……ううん、嘘です。外して下さい。



神様、仏様、浅野様。どうか掠る程度で勘弁して下さい。



「歯ぁ食い縛れ!!!」



「っ!」



来る。



そして、じっとりを通り越してビショビショに汗ばんだ手のひらをギュッと握り締め、両足に力を入れ、踏ん張った…瞬間。



「ゴフッ!!」



「………へ?」



シュッと髪の毛を掠めたボールは、僕の横を通り過ぎると、トントン…っと数度跳ね、ステージ上をコロコロと転がると、再びコートへと戻っていった。