目の前の絡新婦は、僕を見つめていた。とんでもない顔で。

でも、・・・関係ない。

僕は刀で絡新婦の肩を刺した。緑色に染まる。

絡新婦「痛い・・・痛い!!!」

絡新婦は駄々をこねる子供の様に転がった。



僕は獰猛なこの妖怪を倒す。その使命感が胸をいっぱいにする。



陰惨な雰囲気の絡新婦。ぼくはその絡新婦の右頬を左の拳で殴った。

絡新婦「ぐあッ・・・」

絡新婦の牙が一本抜けた。絡新婦は数メートルほど飛ばされ、なんとか着地した。


神門「絡新婦・・・なんで人間を殺した?!僕にはその理由がわからない・・・。教えてくれるか?!」

絡新婦「人間を食べるためだって、さっきから言ってるじゃねえか!!」

絡新婦は僕の元へ駆けてきて、僕の左頬を殴ろうとした。しかし、僕はその攻撃をかわす。攻撃がゆっくりだからだ。

すぐさま雪華が駆けてきて、飛び上がり前方に一回転。絡新婦の首に踵落としを繰り出した。


絡新婦「ぎゃぁぁぁぁぁ!」




絡新婦はその場にへたり込んだ。
そして絡新婦の体から蒸気のような白い靄が発せられた。そして、手がドロリと溶け落ちる。熟れすぎて腐った果実が落下して弾けたように、地面に皮膚が落ちていく。

神門「な、なななな、何が起こってんだ?!?!」

雪華「いいか、奴は絡新婦だ。その本質は蜘蛛で、人間の姿はその表面に浮き出た膜でしかない。つまり、現れるのが真実の絡新婦だ」

ボトリ・・・ボトリ・・・と粘性な音が耳に入る。それと同時に強烈な腐臭も感じられた。僕は慌てて着物の袖で鼻を塞ぐ。

絡新婦「ウ゛・・・ゥ・・・」

絡新婦は顔をその溶けた腕で隠した。しかし、その腕も人間の体を成してはいなかった。そして顔も次第に人間の顔でなくなって行く。俯いていてよく見えないが、顔のあちこちから粘性質のモノが落下していた。

そしてすべてが溶け落ち、その場に現れたのは巨大な蜘蛛だった。
黄色と黒の縞模様、そして少し水色がかって見える。腹の部分が赤色で不気味さを増幅している。それを見て、僕は再度自分の部屋に侵入した蜘蛛を思い出した。

しかし絡新婦も戦える状況とは言えなかった。

雪華「神門・・・」

僕は炎刀を持ち直した。