雪華は手の平を顔の前に出した。優しく掌に息を吹きかける。
するとみるみると氷の礫が形成されていく。
雪華「雪月花!」
そう雪華は叫んだ。
細かい氷の礫が絡新婦の体を切り裂く。
絡新婦の体からは緑色の血が流れた。
絡新婦が怯んだ隙に、雪華は脇差を取り出した。それを釛の腕に振り翳した。
緑の血がブシュッと吹き出る。しかし、その血液はすぐに凍った。
絡新婦「クッ・・ゥアア゛・・・これが氷刀の力か・・・」
絡新婦は痛さに悶えた。
雪華「すべて、凍らせてあげようか?お前の身体も、魂も」
絡新婦「さ・・・さすがは雪女ぁ・・・」
雪華「絡新婦ごとき下等妖怪に、私が負けるわけないだろう。クズ妖怪。」
絡新婦「ッ!!貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
絡新婦は爪から糸をだし、雪華を拘束しようとした。しかし、それも無駄だった。
糸は雪華に近づくにつれ、徐々に素早さを失っていき、最後に凍てついた。氷の彫刻のようになったそれを、雪華は鼻で笑った。
その凍った糸を雪華は脇差で砕く。
雪華「その糸は粘性があるな。よく凍るわけだ。お前は何も考えずに行動し、結果的に自分の不利益となる。後先考えず行動するとは、まさにこのこと」
絡新婦は一歩ずつ後ろに下がる。雪華の威圧感、そして絡新婦をはるかに上回る力で。
雪華「あの方は憂いているのだ。もうお前は長くない。直に死ぬ。命乞いをしようが、私はお前を殺すぞ」
絡新婦「うるせぇぇぇ・・・うるせえええええ!!!!!!」
絡新婦はまた体当たりをしようとした。瞬発力で雪華は見事に避ける。そして腹に一発食らわせた。
絡新婦「う・・・ぐおぇぇぇぇぇ!!!」
雪華「うるさい、ちょっと黙れ」
さきほどの僕のパンチよりもはるかに強いパンチだ。音で分かった。
絡新婦の中の“ナニか”が壊れる音がしたからだ。無残に垂れていた涎が緑に変わる。
もう、絡新婦は勝てない。そう気づいた。ヨロヨロと崩れ落ちる。肩を上下に揺らし、息をしている。
髪の間から見える右目は血走っていた。
それとは正反対に雪華の顔は普通で。まるで、壊れた玩具を見るかの眼差しを向けていた。その顔には汚いものを見る視線も少し混じっていた。
絡新婦「死ぬわけにはいかねぇ・・・ここで死ぬわけには・・・ぐほぁぁぁぁッッ!!」
フラフラと立ち上がった絡新婦はより大量の緑を吐きだした。
中に少し赤いものが混じっている。消化しきれていない人間の血か・・・。
絡新婦「生き血が・・・生き血が・・・」
朦朧としているのか呂律が回っていない。


