神門「うぎゃあああああああ!!!」
シュタッと屋根に飛び乗った銀髪娘。
神門「お、お前、人間業じゃねぇことするんだな」
銀髪娘「無駄口叩かないほうがいい。舌噛むぞ、歯を食いしばれ。あと、桐の箱は絶対に落とすなよ」
そして銀髪娘はまた駆け出した。民家の屋根から屋根へ、と飛び移る。
絡新婦「マテェェェェ!!!」
絡新婦も追いかけてくる。その鬼ごっこが続いた。
絡新婦「やっと追いついたぁぁぁ・・・へへへへ」
絡新婦が高くジャンプをし、僕らの前に立ち塞がった。絡新婦が着地した衝撃で瓦が隆起する。
絡新婦「小娘・・・貴様、何者だ・・・。人間技とは思えぬが・・・」
絡新婦もこの銀髪娘の身体能力に疑問を持っていたらしい。その問いかけに銀髪娘は鼻で笑った。
銀髪娘「私が何者かって?黙ってろよ、このゴミ妖怪」
絡新婦「ッ?!キッ・・・キサマァァァァァァ!!!!」
絡新婦は怒り心頭だった。瓦を蹴散らしながら僕らの方へ突進してくる。口から垂れ流しの涎が、不気味だった。
銀髪娘は、その攻撃をヒラリとかわす。
また銀髪娘と絡新婦は向き合う形となった。
銀髪娘「聞きたいのか?私の正体を」
銀髪娘は絡新婦に向かって叫んだ。
絡新婦「ああ!!貴様はどうせ死ぬのだからな!正体が気になるな!!」
ゲラゲラと下品に絡新婦は笑った。それとは反対に銀髪娘は上品に微笑んでいる。
すると銀髪娘はすぅーっと息を吸った。
銀髪娘「雪降りし 逢魔が時 散華なさった 白百合の 一輪咲く 氷柱には 氷の花弁 ハラハラと 舞い落ちてゆき 舞い上がる 雪化粧した わが都」
銀髪娘は綺麗な声で歌った。空に透き通るような氷のような声。でも、この歌・・・
絡新婦「それは・・・、神門を食おうとした時の・・・ッ!!」
絡新婦は目を見開いた。
絡新婦「その歌のせいで、神門を殺せなかった!!あれは貴様のせいか!!!!!」
あれ、ちょっと待てよ・・・。
じゃあ過去に銀髪娘が言っていた、“殺人未遂事件”って・・・。
神門「なぁ、もしかして、殺人未遂事件の被害者って・・・」
銀髪娘「気づいていなかったのか。神門、お前だ」
神門「うそだろぉぉぉぉぉぉ?!?!?!?!」
いや、本当だ!ってことは、この銀髪娘、命の恩人じゃねぇか!!うおう、神様仏様、ありがとうでござんす!!!
銀髪娘「そしてな、絡新婦。私の正体を、お前は知っているはずだ」


