愛くるしくかわいい子供は、いつどこで牙をむくかわからない。でも、そういう子のほうが、なにかと世間体では可愛がられるのだ。世渡りがとても上手な子。
どちらかと言えば、僕はそれが苦手だった。社会に対して拒絶反応を抱いていた僕に対してそういう子は苦手な存在だった。そういう子は、普段ぶりっ子を気取るから疲れる。そして、その八つ当たりが僕にくるのだ。
さらに、彼らは“ようかいたいじ”だの“わるものせいばい”だの、どこぞのヒーロー物語をすぐに真似する。
さも、主人公は自分のように。本当の成敗される対象が誰なのかもわからずに、彼らは人を傷つける。
それが僕は嫌だった。だからこそ、この社会が嫌いだった。
神門「うぐぐぐぐぐ・・・・・・・・・」
再度、子供の僕の顔面は水面に押しつけられていた。そして、またブ八ッと顔を上げ、手を床につき、必死に空気をむさぼる。
その時、子供の僕が、立っている僕のことを見つめた。
神門「助けて・・・お兄ちゃん・・・ッ」
その両目からは涙が大量に湧き上がっては滴っていった。彼には僕が見えてるのか・・・?
神門(おい、お前・・・見えて・・・?)
僕が話しかけたその時、僕の体の中をすり抜けて、若い男が子供たちに近づいた。
神門(そうか、僕の後ろに歩いていた人に・・・)
その若い男はその様子、子供の僕の顔を見て小さい声でこう言った。
男「うっわ、キモッw」
神門(・・・え?)
その男は、よっこらしょと子供の僕の隣に来た。
男「その顔はサ、マズイっしょw」
男は子供の僕の顔を覗き込んで呪文のように言葉を話す。
男「あのねぇ?君みたいな子のことを、助けるような人がいると思う?妖怪を助ける馬鹿はいないっしょwウケるww見てると気持ち悪くなるわwww」
神門「なん、で・・・」
子供の僕は片目を見開いて、ガタガタと震えていた。
そうだった。子供の僕はいつも。道行く人に蔑まれる日々。
そして、今日は悪夢の終わりが見えない。いつもだったら、あの少女が出てきて助けてくれるはずなのだが・・・。
子供「きもちわりー!しね!」
子供の僕は脇腹を蹴飛ばされ、地に横たわる。泣き叫ぶ子供の声は誰にも届かない。そう、誰にも・・・
神門(いや・・・だ、いや・・・・・・・・!!!)
気づけば僕の眼からも涙があふれていた。口元が痙攣して、足も震えが止まらない。
こわい。こわい。こわい。
僕の呼吸がだんだんと苦しくなる。うまく息がすえない。過呼吸のようだ。
息苦しい。眩暈がする。
力が入らなくなり、片足を地面につけたときだった。
??「辛いものを見過ぎてしまったね」
僕は誰かに目を後ろから塞がれる。その声には聴き覚えがあった。
神門(た、いざんおう・・・さん・・・?)
泰山王「ん、大丈夫。もう悪夢から醒めよう。」
神門(悪夢・・・)
泰山王 「ちょっとこれは強すぎなのかな・・・まあ、仕方ないけど」


