大江戸妖怪物語


気づいた時には僕の目の前には龍の頭部があった。僕は龍の首の部分に炎刀をグサリと突き刺した。龍は攻撃を中止し、その痛みに体を捩らせる。そして、僕の体を振り落とそうと左右へ激しく揺れた。

黄梅「いてて!あー・・・ッ、やっと引っかかれたのが取れた・・・」

黄梅が龍の下から這いずるように出てくる。そして龍は甲高い雄たけびを上げると、黄梅に向けて電磁砲を放った。

黄梅「きゃぁぁぁッ・・・!!」

黄梅はしゃがみこんだ。しかし、バチンという巨大な音と共に、電磁砲は木端微塵に消えた。

雪華「ハァ・・・、げほごほ・・・ッ・・・随分とまあ、・・・好き放題やってくれたなァ・・・?」

黄梅の前には雪華が出現させた巨大な氷の壁が聳え立っていた。

神門「せ、雪華!うわっ!!」

安心したのもつかの間、龍はさらに体を暴れさせた。黄梅もすぐに立ち上がり、龍に応戦する。

黄梅「こんの・・・!いい加減に動くのやめろ的な!!」

黄梅が放った梅の絞り汁が龍の傷口に沁みたのか、龍は尾を激しく地面に叩きつけた。激しい地震のような地の揺れと、所々に地割れが発生していた。

雪華もボロボロの体を起こし、手のひらに出現させた氷柱を龍の腹部に向かい投げ、突き刺した。

龍はあまりの痛みに、上空へ飛び立った。雪華と黄梅も龍にしがみつき、暴れる龍に必死に食らいつく。

そのまま龍は寺の池へと突っ込もうとした。

雪華「神門!手を離せ、さもないと、沼に引きずり込まれるぞ!」

神門「う、うん!わかった!!!・・・って、え?」

僕は龍の背から飛び降りようとして炎刀を引き抜こうとした。しかし、抜けない。僕の顔が途端に真っ青になる。体の至る穴という穴から冷や汗が流れおちる。

黄梅「なにしてるんスか!神門さん!沼に引きずり込まれたら溺死間違いなしだし!さっきみたいに、運よく助かったとか、二度目は無いっすよ!!」

神門「いや、だって・・・抜けない!!抜けないんだってぇぇぇぇ!!!!」

そのまま僕は沼へと落下していった。龍と共に。激しい水しぶきに、体に少々の痛みを覚えた。龍は沼深くへと潜って行く。