何時間走っただろうか。
息は激しく荒れ、脇腹にも激痛が走る・
既に周りは深い山に囲まれた土地にまで来た。そして、例の待ち合わせ場所に到着した。
神門「ついたあああ!!」
雪華「遅いぞ」
雪華は顔をしかめ、腕組みをしながら僕を睨みつけている。
能上「いやはや、苦しい道のりだった・・・」
さすがに能上さんもこれに堪えたらしく、座り込んだ。
黄梅「てかてかぁ~!さっさと滝まで行こうよー!ここでぐったりしてる時間とかないし~」
神門「逆にどうして二人がそんなに元気なのか不思議だけど・・・」
僕は荒い息を飲み込みながら、滝入口と書かれた看板の先へと歩を進めた。
そこはまるで別世界だった。空気が涼しく、ヒンヤリとしている。人の声も聞こえない。
ところどころ苔むした岩盤の上を歩く必要があったため、少し滑った。道のそばには渓流が流れており、先ほどの豪雨のせいで水かさは高かった・
少し歩くと水の音が聞こえ始めた。しかし、鬱蒼とした森の中、どこから音が聞こえてくるか定かではない。少し歩くと、一本の巨大な滝が左手に見えた。
黄梅「あれは天狗滝っていうんだよ。目指している夫婦の滝・・・男滝と女滝はもうすぐそこだし」
さらに僕たちは歩を進めた。すると轟音と、ひんやりとした空気が伝わってくる。
黄梅「ここがその滝・・・って、うわあ!水量とんでもないよ!さっきの雨が原因的な!」
黄梅いわく、普段もう少し水量は無いのだとか。しかし、今はその状態が想像できない。まるで華厳滝のように激しく水が落下している。
神門「どう?氷で一瞬でもいいから水の流れを止めることってできない?」」
雪華「この水量ではさすがに無理がある。凍らせても次から次に水が来ては埒が明かない」
能上「もう時間も無いようだし、最終手段で行くしかない」
能上さんの眼光がキラリと険しくなる。
能上「強行突破、一択だ」
神門「無理無理無理ィ!背骨が粉砕しますって!あんなとこ入ったら!」
しかし、当の能上さんは入る気満々で。
能上「では神門くん、行ってらっしゃい!」
神門「いや、言い出しっぺのアンタがいきなさいよ!なんで僕!?!?」
能上「年功序列型だ」
神門「大人狡い!狡すぎる!」
能上さんの発言により、やむなく僕は滝に突入することになったのである。


