一方、その頃、男子チームでは・・・
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神門「うぅおおおおおおおおお!!!なんじゃこの雨はァァァァァァ!!!!!!!!」
能上「神門くん、少し雨宿りしたほうがいいと思うのだが」
神門「でも、後ろから追手が来てるじゃないですか!!ああもう、あいつら雨宿りしろっての!!」
能上「・・・・・・」
僕らは豪雨の中、川の上流へ向かい走り続けていた。しかし、豪雨のせいで視界不良、足場最悪の為、何度も石に躓き転んだ。
体の至る所に擦り傷を作りながら、僕は走った。
能上「神門くん、前!」
神門「え?」
僕は雨で何があるのかわからなかった。能上さんには何が見えたのか?
すると数秒後、ゴゴゴゴと地響きのような音がした。目をよく凝らしてみると、濁流がこちらへ猛然と向かってくるのが見えた。茶色く濁った水は壁のように迫ってくる。
神門「うぎゃああああああああああ!!!!!!」
僕の絶叫も川の音で揉み消された。
能上「こっちだ!」
能上さんは岸にある大木を指差した。僕はその木を目指して猛然とダッシュする。
しかし、濁流のスピードは速く、あっという間に目の前まで水が押し寄せる。僕は渾身の力を込めて、能上さんの手を握ったまま高くジャンプした。
神門「届けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
僕はふぎぎ、と声を漏らしながらなんとか枝にしがみつくことができた。急いで僕は自分の体と能上さんの体を持ち上げた。僕はひどく息を切らして木の幹に凭れ掛かった。
次の瞬間、轟音を纏った茶色の水の軍勢が僕の足のすぐ下を駆け抜けて行った。
神門「ギリギリ、セーフ・・・」
能上「恐らく、どこかで土砂崩れが起き鉄砲水が起こったのだろう。しかし、この豪雨だ。水量が収まることはなさそうだ」
僕と能上さんは川のそばを離れた。川のそばを離れても、轟轟とうなる水音が聞こえてくる。
神門「雪華たち、大丈夫かな・・・」
僕は空を見上げながら雪華たちを心配した。
能上「まあ、出会って間もない私が言うのもあれだが、彼女たちは大丈夫だと思うよ」
確かにそれはそうだ。しかし、相手は大人数。しかも『殺してはいけない』をモットーに戦わなくてはならないという、巨大なハンデを背負っている。
神門「ハァー・・・」
僕は頭を押さえながら溜息を吐き、水が滴る着物の袖を絞った。大量の水が吹き出し零れ、地面に広がる。しかし、すぐに土に吸収されその形は無くなった。
しかも、靴にも水が入り、歩くたびにニチャニチャと気持ち悪く微量の水が、靴の中敷きに滲みては吸収を繰り返し、あまりの不快さ故、僕は眉を顰めた。所々、枯葉があるようでチクチクする。
能上「雨が止む気配は・・・全くないですな」
靴を逆さにして水を出している僕に能上さんは言った。
神門「既にこんなにびしょ濡れなんだから、雨にぬれても変わんないですよ」
そして僕らは再度、走り出した。


