雪華「それにしても暑いな・・・」
黄梅「夏の季節だし、仕方ないッしょ」
二人は手で顔を仰いだ。その時、雪華と黄梅の体に少し涼しい風が吹いた。
周りの景色もみるみる内に変化していき、そばにあった楓は赤く色づいた。
黄梅「秋の季節になったっぽいね」
雪華「はぁ・・・こんなに気温が変わっては、体が狂ってしまいそうだ」
雪華は頭を押さえた。
すると頭部に何か冷たいものを感じた。それは徐々に体を伝う。
雨だ。
雪華「しかも雨まで降ってくるとはな・・・。あそこの小屋に避難しよう」
それはみるみる内に豪雨となり、近くにある小屋へと入った。どうやらもう使われていない小屋らしく、雨を一時的に防ぐには十分だった。
着物についた水滴を手で払うと雪華は腰を下ろした。
雪華「この豪雨では進めそうにないからな・・・少し収まるまで待つか」
小さく開いた壁の穴から外の様子を伺う。
雪華は壁に凭れ掛かり、ふぅーっと溜息を吐いた。
黄梅「っていうかぁー」
黄梅は雪華にニヤニヤしながらすり寄って行った。
黄梅「雪華さんって、神門さんのこと好きとか?」
雪華は表情一つ変えずに答える。
雪華「・・・もしそうだったらどうする?」
黄梅「否定とかしないんすかー?!」
雪華「お前も神門が好きとか先ほど言ってなかったか?」
黄梅「確かに神門さんはイケメンだしー、優しいしー、もうパーフェクトなんだけどー・・・」
黄梅は少し悩んだ後に言った。
黄梅「でも、雪華さんとお似合いっぽいからさ」
雪華「言ってくれるわ」
雪華はフッと自嘲するように笑った。
雪華「今は好きではないさ」
黄梅「今は・・・って、随分と意味深~」
雪華「それ以上聞くってのは野暮ってものさ」
黄梅「ま、女性は秘密あっての魅力だからね~」
雨は上がらない。雨は強さを増す一方で、小屋の屋根を壊すかのごとく激しく打ち付けてくる。屋根の雨漏りを見つめながら雪華は言った。
雪華「その白山三滝というのは、有名なものなのか?」
黄梅「ほんっとに超有名だよ!この村に住んでる人以外にも、武蔵国内でも人気スポットとして有名!異常気象になる前までは、夏になると涼みによく観光客が来てたんだけどさ・・・。この異常気象になってから全く・・・皆怖がっちゃって・・・」
雪華「・・・」
黄梅は頭を垂らした。
黄梅「おかげでアタシの梅が売れなくなっちゃったじゃねーか!!!!異常気象の犯人見つけたらブチ転がぁぁぁぁす!!!!!」
雪華「お前が悔やんでいるのは売上か」
黄梅は悔しそうに地団太を踏んだのであった。


