そして第二章を読み上げ始める。
能上「その少女には妖術が備わっていた。妖怪ではないが、人間や動物を操る能力を持っていた。彼女が刃で軽く傷をつけた相手は、すぐさま彼女の命令に従ってしまう。彼女は後に尼になると同時に、その刃を一番大きな直線の滝の奥に隠した。しかし、この刃だけでは人を操ることはできない。彼女が持つ紅玉を身に着けたうえで、発揮されるのである。
彼女は今後、この刃による悪事が行われないように封印したのである」
つまり、雀陽はその刃を滝の裏から盗み出したことになる。
能上「彼女はこの刃を警戒してか、この妖術を解く道具を、また別の滝の裏に隠したのである。それは絆を持たないと入れない場所。番いが息を合わせた滝・・・ダメだ、これ以上は劣化が酷くて読めない」
雪華「滝?滝とはなんだ?」
能上「私も存じないが・・・」
黄梅「アタシ知ってるかも!この村の端のほうの山ん中にデカめの滝があんの!白山三滝っていうの」
神門「しろやま・・・みたき・・・?」
黄梅「うん、そこには落差が十メートル以上ある滝ともう二つの滝がある系。もう、その場所しか、考えられないし」
雪華「すぐにそこに行こう」
神門「でも・・・」
僕は立ち上がり、外の様子を伺った。やはり、洗脳された民衆がうろついている。
神門「はぁ・・・。出るには何か策を決めてから行かなくちゃ。無策のまま外に出たところで、やられるだけだって」
改めて僕は座り直し、紙を広げた。
神門「なあ、ここに滝までの地図って書ける?大まかでいいんだけど!」
黄梅「オッケー」
黄梅さんは筆を握ると、サラサラと線を描いていった。
そして数分後、地図が完成した。随分と簡略的だが、なんとか行けそうだ。
能上「私も同行していいだろうか」
神門「能上さんも?」
能上「ああ」
黄梅「ベリベリ大丈夫じゃね?」
黄梅の似非チャラ語に頭を痛めながら、僕は雪華のほうに向きなおった。
雪華「では、行くとするか。行くなら二手に分かれようか」
神門「え?どして?」
僕は首を傾げた。
雪華「私と神門、そして黄梅は狙われる立場にある。このまま四人でここを出たら総ての洗脳された人間が追いかけてくるだろう。少しでも分散しなくてはならない」
雪華は腕組みをして少し悩み、人を割り振った。
雪華「私と黄梅、そして神門と能上さんで行こう。落ち合う場所はどうする?」
黄梅「なら、その滝の入り口の前にめっちゃでっかい看板があるの。すごい目立つ赤い看板。そこでいいっしょ?」


