大江戸妖怪物語


「馬鹿か、お前の妖術は大抵炎系統だろ。炎だと後ろから追ってきた村人を傷つける可能性がある」

一理ある理由のため、僕,黄梅、雪華の順で穴に入ることになった。

「うわ、ほんとに暗い・・・」

「神門!さっさと入れ!!もうすぐ破られるぞ!!」

振り向くと既に壁に小さな穴が開きつつあった。僕は意を決して穴に飛び込む。そして匍匐前進で穴を進む。しかし、暗いため、どこまで行くのかもわからない。

「破られた!!」

後ろから雪華の声が聞こえた。

「菱氷壁!!」

雪華は穴の入り口を氷で塞いだようだった。

「急げ、神門!あいつらは氷を踏みつけて割ろうとしている。ほんの時間稼ぎに過ぎない」

「わかってる!わかってるって!!」

わかっていても、この態勢では早く動けない。いつまでこの穴は続くのか。
それもわからないまま、僕は進み続けた。

後ろからドシャァッという音が聞こえ、声が聞こえ始める。どうやら氷が破られたようだ。

「破られたか・・・」

振り返ると自分たちが来たほうから、何人もの声が聞こえてくる。

「急がなくっちゃ・・・!!」

そのまま僕らは進んだ。
でも出口が見えない。




それから何十分と経っただろうか。まだ出口は見えない。本当にここから出られるのかと心配になってくる。

「神門さん!諦めちゃ、そこで終わり的な!!」

「わかってるけど・・・」

正直体力が限界に近くなっていた。穴に入ってからノーストップで進み続けている。
僕が諦めかけた時、目の前に一筋の糸のようなものが見えた。
僕はそれに目を凝らす。

「・・・光。光だ!!」

糸のように見えたものは光だった。