僕らが道を歩いていると、

?「やっほー・・・。神門くん♥」

と、やたら人懐っこい声が後ろから聞こえてきた。こんなところで誰だと思いながら後ろを見たとき僕の顔面から血の気が引いた。まさに裁判官のような恰好をして、頭に薬壺をちょこんと乗せる究極ドS・・・。

?「ちゃんと山姥倒してるじゃーん!すごいねー」

木の上で微笑む男・・・。

神門「た、泰山王さん?!?!」

泰山王「ぴんぽーん!情報はもう入ってきてるよー!苦しんだみたいだけどお疲れさまさま!あーぁ、神門君の苦悶の表情、見たかったなー」

泰山王は物騒なことを飄々といってのけた。僕は泰山王を睨んだが、泰山王は相変わらずの調子といった所か、ニコニコとその笑みを絶やさなかった。以前のような官服ではなかったが、独特な服を身に着けている。

雪華「泰山王・・・」

雪華が、明らかなブラックオーラを出しながら、泰山王に近づく。殺気が立つとはこのことだと身を以て知る。

雪華「なぜテントを一つ抜いたんだ!おかげでこいつと一夜を同じテントで過ごさねばならんかった!!・・・・・・いっぺん死にたいみたいだな」

雪華は氷刀を抜いた。

泰山王「え?!あのテントの中に二人で寝たの?!うっそー、嫉妬しちゃうなぁー」

泰山王はプクーと顔を膨らませた。しかし、その顔もどこか楽しげで。

泰山王「僕はあのテントで雪華ちゃんが寝ると思ってたからさ。神門くんが外で寝ると思ってた。地面の上で寝ると砂利が当たって痛いもんね。その痛みに耐える神門くんを想像してたのにぃ」

神門「あなた、本当に冥界で偉い立場の人間なんですか・・・?」

僕はそう思わざるを得なかった。

雪華「つべこべ言わずに降りて来い。話はそれからだ」

泰山王「あはは、雪華ちゃんこわ~い。ちょっと悪戯しただけでしょ。降りると怖いから、ここで話すね」

雪華を軽く流しつつ、泰山王は話し始めた。もちろん、泰山王には悪びれる様子などは微塵もない。

泰山王「さてさて、ここからもう少しいった所に分かれ道がある。行きは左から来たんだけど、右に行ってほしいんだ」

泰山王は頬杖しながらニヤニヤ笑いながら話す。

泰山王「実はね、右に行ったところに一つの村があるんだけど、その村で異常なことが起こっちゃってるんだよねぇ」

神門「異常なこと?」

泰山王「気になるの?神門くん」

神門「ま、まあ」

泰山王「異常なことっていうのは、日に日に季節が変わってしまうんだよ」

神門「季節が・・・変わる?」

僕はそれが理解できなかった。

泰山王「例えば、今の時期はジメジメした梅雨の時期でしょ?でも、その村では今日はポカポカな春の気候だったり、明日には豪雪が降るかもしれない。そんなとこ」

雪華「時間が・・狂っているということか」

雪華が泰山王を見上げながら言った。