大江戸妖怪物語







「うーん・・・・・・ん?」


僕は目が覚めた。気づくと朝になっていた。

(あれ?僕はここで何して)

ふと、横を見ると、

「!!!!!!!!!!!!!!」

僕の心臓は高鳴った。

「せ、せせせせ、せせせせせせ雪華ぁッッ?!」

僕は座布団を枕にして横たわっていた。そのすぐ目の前、距離にして15cm位のところに雪華の寝顔・・・。スヤスヤと寝息を立てている雪華は、なんかその・・

(かわいい・・・)

普段の横暴さなんて微塵も感じられない。というか、このシーンだけ見れば、ただの美人な銀髪の女の子って感じがする。

僕は起き上がろうとしたが、頭に鋭い痛みを感じ、また横たわった。おそらく、昨日一杯飲んだだけで、まさかの二日酔い・・・。嗚呼、なんか情けない・・・。

まぁ、しょうがないよね。アルコール分解酵素がないんだよ、僕には。二十一にして下戸は恥ずかしいぞ下戸は。

「うーん・・・」

(雪華起きてくれないかな)

僕は激しい頭痛で起きれない。ああ、もうやだやだ。
僕は雪華を起こそうとし、少しだけ自分の体を起こし、雪華の肩を揺らす。

「雪華・・・雪華ぁ、起きてぇぇ・・・」

しかし、雪華は起きそうもない。まだ寝息が乱れる気配はない。
その時僕の左側頭部に激しい頭痛。

「・・・ッッ!」

その瞬間、僕はバランスを崩した。

「いってて・・・、あ」

僕の右手は雪華の顔の右に、左手は雪華の顔の左に、つまり押し倒したような形になってしまった。

「・・・ッ」

胸がドキっとする。なんか、胸が苦しい、ような・・・。

「・・・なんだ騒がしい」

雪華がパチっと目を開ける。僕と目が合う。時が止まった。

(あれ?意外とまんざらでもない?)




ドゴォッ!




「何やってんだてめぇ」

雪華の右ストレートが僕の頬を捉えた。僕は崩れ落ち机に背中を強打した。

「いやいや、これは誤解だから!」

「黙りな」

今度は右アッパーが僕を捉えた。

「やめて!僕、二日酔いなんだから・・・」

「たった一杯飲んだだけではないか」

「たった一杯、されど一杯なの!雪華はあの後どのくらい飲んだの?」

「テキーラはうまかったな」

「度数強いの飲んでる!」

「てか・・・ここ、集会所?!?!」

雀の鳴き声がする。外からは人の往来の声がする。

「ああ、お前少し飲んで気を失っただろ。会長さんが気を利かせて寝かせてくれたんだ。起きたら集会所の鍵を返しに来て欲しいって」

「えぇッ?!なんだかすごく申し訳ない!」

「まったくだ。・・・ったく、アルコール分解酵素がないのも哀れなものだな」

僕はゆっくり起き上がる。

「さてと、起きたことだし、鍵返しに行くぞ。あまり遅くなると会長さんにも迷惑になる」

集会所の戸締りをし、扉から出た。

(ああ・・・頭いってぇぇぇ・・・ほんと飲まなきゃよかった)

「神門、会長さんの家に案内してくれ。あいにく私は家を知らない」

「えっと、すぐ近くだったような・・・。こっちだよ。いててて・・・」

頭を抑えながら僕は曲がり角を曲がった。曲がるとすぐに家がある。チャイムを鳴らし、少し待つと、会長さんが出てきた。

「いや~、神門くんはお酒飲めないのに飲ませて悪かったね!すまないすまない」

「いえ、僕が弱いのがいけないんです」

「鍵ありがとう。雪華ちゃんもありがとう。助かったよ!これはお礼の品。あまりいいものじゃないけど」

会長さんは桃の缶詰をくれた。

「ありがとうございます。家に帰ってたべます!」

僕はお礼を言った。