大江戸妖怪物語




遠くで梟が啼く声が聞こえる。静まり返った部屋の中。帰ってこない雪華。
僕は玄関を出て、夜道の中、雪華を探した。

(雪華のことだから、無事だとは思うけど・・・。やっぱり心配だ)

すると遠くに影が見えた。襲われた時のことを思い出し、僕は太刀に右手を伸ばす。

目が慣れてきた。そこにいたのは雪華だった。

「雪華!!!・・・・・・?!」

そこにいたのは土埃に塗れた雪華だった。

「神門か。たく・・・わざわざお出迎えとは。私の召使にでもなったか?」

「冗談言ってる場合じゃないって!どうしたの?大丈夫?!」

「私は無傷だ。先ほど、影と遭遇してな。少し殺りあっただけのこと」

「少しって・・・どれほどの影と戦ったの・・・?」

「五十程度だ・・・」

「ご、五十って・・・」

「おそらく、狙われているのは私とお前のようだ。くれぐれもこれから気をつけることだな」



雪華は家の方角へ歩を進める。僕は後ろについていった。

「先程は冷静さを失ってしまったようだ。私としたことが愚かなる真似を」

自嘲気味につぶやく雪華。その瞳には憂いが見える。

「雪華・・・」

「何ショボショボしているのだ。塩をかけた青菜のようではないか」

「僕はしわしわなのか?」

「ええ。とっても」

皮肉気味に雪華は言う。でも言い返す気にはなれなかった。
雪華が、雪華という存在が、儚げに感じたから・・・。