大江戸妖怪物語


「やっぱり・・・眸のこと嫌いだよね?」

「当たり前だ。初対面であの口のきき方はなんだ。私はぶりっ子という生物が嫌いでね。妖怪の次に倒してしまいたい」

「でも・・・眸にもいいところあるよ・・・」

僕は昔、眸と遊んだことを思い出していた。

「・・・眸だけだった。僕を救ってくれたのは。四面楚歌だった僕を守ってくれたのは、眸だけで・・・。皆、僕のことを白い目で見るだけなのに、眸はだけは僕に手を差し伸べてくれた」

「・・・・・・あの女だけ・・・か?」

雪華は顔をこちらへ向ける。先ほどよりも怒りが増している雰囲気だった。口を尖らせている。

「そうだよ!僕のことを唯一助けてくれた人・・・それは眸だと思う」

雪華はスッと立ち上がった。雪華は玄関へと向かう。

「雪華・・・?どこか出かけるの?今帰ってきたばっかなのに?」

「・・・お前は」

「・・・え?」

雪華の声は消えそうで。雪のようで。

「何も・・・」

靄のようで。雲のようで。

「頭を冷やせ・・・」

そういうと雪華は玄関をピシャリと閉めた。












******

「ったく・・・」

銀髪娘は玄関から出た後、当てもなく歩く。
雪華にはこうすることしかできなかった。

「神門を助けたってのは・・・」

雪華は拳を握りしめた。そして氷柱を出し、振り向きざまにそれを投げる。



ズチュッッ・・



鈍い音と同時に、黒いものが崩れ落ちる。

「私を・・・殺そうってか?」

周りに人影はない。恐らく、人間が寄り付かない電波でも出しているのか否か・・・。雪華はニヤリと黒笑を浮かべ、影たちへ近づく。

「それにしても数が多い・・・」

影はうようよしているが、その数は五十は超えていた。

「あまり神門の前では本気は出せなくてな。あまり出すと怯えさせてしまう」

雪華は脇差を引き抜き、拳に力を入れた。

「ゆっくりゆっくり・・・。慣れさせていってやらないとね」

そういって雪華は群れへと突進した。

雪華の目が紅に輝く。

「安心しろ、お前らは皆・・・叫喚地獄行きだ!」


******