「やっぱり・・・眸のこと嫌いだよね?」
「当たり前だ。初対面であの口のきき方はなんだ。私はぶりっ子という生物が嫌いでね。妖怪の次に倒してしまいたい」
「でも・・・眸にもいいところあるよ・・・」
僕は昔、眸と遊んだことを思い出していた。
「・・・眸だけだった。僕を救ってくれたのは。四面楚歌だった僕を守ってくれたのは、眸だけで・・・。皆、僕のことを白い目で見るだけなのに、眸はだけは僕に手を差し伸べてくれた」
「・・・・・・あの女だけ・・・か?」
雪華は顔をこちらへ向ける。先ほどよりも怒りが増している雰囲気だった。口を尖らせている。
「そうだよ!僕のことを唯一助けてくれた人・・・それは眸だと思う」
雪華はスッと立ち上がった。雪華は玄関へと向かう。
「雪華・・・?どこか出かけるの?今帰ってきたばっかなのに?」
「・・・お前は」
「・・・え?」
雪華の声は消えそうで。雪のようで。
「何も・・・」
靄のようで。雲のようで。
「頭を冷やせ・・・」
そういうと雪華は玄関をピシャリと閉めた。
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「ったく・・・」
銀髪娘は玄関から出た後、当てもなく歩く。
雪華にはこうすることしかできなかった。
「神門を助けたってのは・・・」
雪華は拳を握りしめた。そして氷柱を出し、振り向きざまにそれを投げる。
ズチュッッ・・
鈍い音と同時に、黒いものが崩れ落ちる。
「私を・・・殺そうってか?」
周りに人影はない。恐らく、人間が寄り付かない電波でも出しているのか否か・・・。雪華はニヤリと黒笑を浮かべ、影たちへ近づく。
「それにしても数が多い・・・」
影はうようよしているが、その数は五十は超えていた。
「あまり神門の前では本気は出せなくてな。あまり出すと怯えさせてしまう」
雪華は脇差を引き抜き、拳に力を入れた。
「ゆっくりゆっくり・・・。慣れさせていってやらないとね」
そういって雪華は群れへと突進した。
雪華の目が紅に輝く。
「安心しろ、お前らは皆・・・叫喚地獄行きだ!」
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