大江戸妖怪物語


「なかなか言ってくれる・・・この小娘が・・・」

雪華の口角がピクピクしている。ヤバイ。これヤバイ。

「小娘?私たち、大体同い年くらいじゃない?あ、もしかして、自分の方が老けてるって感じているからそういうこと言うのかな?髪も白髪だし」

「これは銀髪だ。遺伝子だ」

「きゃはッ!そんなこと聞いてないしーぃ!」

雪華VS眸の戦いは、男が入ってはいけない雰囲気だった。

「このぶりっ子女が。てめえ・・・」

「女の子なのに口が悪いのね❤」

「女の子なのに性格悪いのね」

「はぁ?あんたよりは全然いいし」

「その言葉、そっくりそのまま返してやろう」

こ、これが女の戦いなのか?!
くそ、入れん。

「あんた、神門くんの何なのよ?蠅じゃなかったら、蛆虫?」

「てめえこそ何なんだ。街灯の下に寄り集まるクスサンか」

「なんですって?!」

「そっちこそなんだ」

「あ、あの・・・さ、やめよッ?道の真ん中で・・・」

僕はやっとのことで口を開いた。女二人の口論のせいで、観衆がちらほら・・・。江戸は喧嘩が華っていうけど、僕はハラハラだよッ!


「ちょっと黙ってて、ミ・カ・ド・くん♥」

眸は僕の胸をツンッと突いた。

「退けやこの野郎」

雪華は僕の胸をドンッと突き飛ばした。

「さっきから聞いていたら腹が立つ。お前礼儀ってもんがなってねぇな」

「え~?口悪い~!!眸泣いちゃうよ~!うえ~ん」

「気持ち悪」

「うっさいわね!」

周りには大観衆が集まり始めた。いいぞーもっとやれーの声が響く。

「ちょっと・・・あの・・・やめてください!」

僕が間に割りいって、なんとかド付き合いが終わる。

「神門くんがいうならしょうがないかぁ。じゃ、お元気で。蠅野郎❤」

「二度と姿を見せるな。ゲスい蛾が」

眸は軽い捨て台詞を残して、去っていった。と、同時に観衆もパラパラと散っていく。

「頭にくる」

雪華はそう吐き捨て、家へと向かった。










「あいつ、子供の頃もああだったのか?」

「あいつって?」

「蛾」

「・・・眸のことだね」

よほど頭にきているのか、眉間に皺が寄っている。普段無表情の雪華にしては、珍しく見せる表情であった。

「うーん・・・。あまり記憶には無いけど。もうちょっとおとなしかったよ。少なくともあんな口調ではなかったし・・・。まあ、大人になると性格も少しは変わるよ」

「性格は変わるのか・・・、哀れだな」

雪華は頬杖を突きながら、右手の人差し指で机をコツコツと叩いていた。