大江戸妖怪物語




「ていッ!ハァッ!えんやーこーらさっさ!」

・・・僕は何十回葉を上に放り投げてはスカしているのだろう。

「84回目」

「数えてたんかいッ?!」

「今日は休んだらどうだ?これ以上続けると手に肉刺ができるぞ」

「あッ・・・」

僕は右手を見る。すると人差し指と中指の下あたりの掌で肉刺が潰れていた。集中していると気が付かないが、いざ気づいてしまうととても痛い。

「もう肉刺になっていたのか。気づかなくてすまない」

雪華は家の中に入ると消毒液と包帯を持ってきた。

「手を出してみろ」

雪華は僕に左手を差し出す。

「いッ・・・いやッ・・・!いいよいいよ!べつにこれくらい・・・」

僕は右手を引っ込める。

「アホなこと抜かしている場合ではない」

雪華は半ば強引に僕の右手を引っ張った。そして僕の右掌に消毒液がたっぷりと塗られる。

「ぐぎゃああああああ!沁みるぅぅぅ!!すぃみるうううう!!!」

「ジタバタ動くな。さもなくばこの肉刺をもっと潰してしまうぞ」

「なにその脅迫!看護されてるのに脅迫受けてるよ僕!」

「お前が動くと手先がブレるのだが。余計痛いぞ」

「圧迫しないでぇ!なんか指が捥げそうでずぅううう!」

「てい」

「押すなぁ!押さないでくれー!!!」

この言動でご理解いただけるように、僕、紅蓮神門は消毒液のあのシュワ―――!!!ヒリヒリヒリー!!!って感覚が大嫌いなのです。

「うぐぅッ・・・」

僕は半泣きになりながら看護(暴力?)に耐えた。グルグルに巻かれた包帯を眺める。とても綺麗に巻かれていた。

「どうした?巻き方が気に食わないか?それとも、まだ消毒したりないのか?」

「いえッ!消毒は結構です!」

雪華はまだ消毒をしたいらしい。

「意外と綺麗に巻くんだなーと思って」

「なんだその言い方は。私にだってそれぐらいの力はあるぞ」

「女子力というやつか・・・。雪華も女の子なんだな」

「おい、窓閉めてこい。寒い。5秒以内に閉めなければ背骨折るぞ」

「言動は女子力皆無じゃねぇか!」