「まだまだだな」
「くそ・・・やっぱり女子に負けるってのは精神的につらいな。物理攻撃だけでここまで差が出ると、炎系の攻撃も弱くなるよな」
「しかし、神門。良く頑張っていると思うぞ。いずれ、素晴らしき剣士に・・・なれるかどうか」
「そこはなれるって言ってくれ!」
「いつ私が倒れても、お前ひとりで戦えるようにしてくれ。孤立無援の状態になっても、己が身を守り続けろ」
雪華は傍らに生えていた細長い葉を千切って僕の方に向けた。
「この葉を葉脈に従うように刀で斬ることができればよいのだが」
「こ、こんな細い葉を?!」
その葉は縦に長く、横は短い。笹の葉のようなそれを斬ることは容易ではない。
「雪華はできるの?」
「見ていろ」
雪華は細長い葉を上へ放り投げた。ヒラヒラと風に逆らうことなく揺蕩い、回転しながら落下していく葉。雪華はじっと見て脇差を引き抜いた。そして即座に風を切る音がした。
地面に落下した葉は、二枚になっていた。
「すごい・・・。こんな縦長に、一直線に・・・。切り口も綺麗だ」
斬られた葉は、とても美しかった。
「こういった繊細なものは切先で斬る。刀の腹ばかりで斬っていると、攻撃がワンパターン化してしまう。相手や相手が使う技をよく見て使い分けることも重要だ」
雪華は庭に生えている椿の葉を一枚千切った。
「まずはこれくらいの大きさの丸い葉で練習だな。細すぎると当たらないから、練習にならぬ」
「これを斬ればいいんだな」
雪華は頷くとその葉を上に投げた。
「よっし」
僕は太刀を抜くと、葉を目がけて振り下げた。しかし、葉は僕の刀を避けるかのようにヒラリと刃から逃れた。
ポトリと一枚の葉が落ちた。
「・・・ごめん」
「気にするな。初めてなのだから」
「でも葉が避けた気がしたんだけど、なんで?」
「うむ・・・。お前は攻撃に無駄な動きが多いのかもな。動きが大きいとその分刃は風を纏う。そして、敵に向かって刃の部分をを向けていないではないか」
たしかに僕の動きは大振りで、雪華に比べると俊敏さが無い。そして一番切れる部分を相手に向けられていない。
「相手にダメージは与えられるかもしれぬが、その隙を突かれ逆にお前が不利になるだろう。今のままでは」
「う・・・。もう一回やってみる」
僕は葉を上に投げた。


