大江戸妖怪物語


「うぅ・・・痛いよ」

僕は殴られた頭を押さえながら、居間へと向かった。雪華は何食わぬ顔で座っていた。

「雪華ぁ・・・マジ殴りしなくても・・・」

「セクハラだ。訴えるぞ」

「ひでぇッ!」

「訴えられるか、熱湯ぶっかけられるか。どっちがいい?」

「どっちも嫌だッ!」

僕は半泣き状態で座った。

「はあ・・・」

「それにしても・・・荷物、渡せないままなのか?」

雪華は部屋の端に置いてある箱に目を向ける。

「何が入っているのやら・・・」

「・・・開けちゃおっか?」

僕は箱を取りに立ち上がろうとした。
雪華はすかさず僕を止める。

「やめろ馬鹿。人様の荷物など、勝手に見るものではないだろう」

「う・・・。そうだよね・・・」

僕は諦めて座る。

「・・・」

僕は雪華の顔を見つめる。

(本当にしなやかな身体だな・・・。すぐおれてしまいそうだ・・・。って、こんなこと考えるから雪華に変態って言われるんじゃん!)

僕は頬をぺチペチ叩き、自分の考えを正す。雪華はいきなり頬をペチペチした僕を見て不思議そうな顔をした。

(・・・でも、こんなか細い女の子に僕はまだ勝てない。助けてもらってばかりいる・・・。なんだか情けないな)

絡新婦、釛の時も雪華は助けてくれた。僕が食われそうになっているところや、また戦った時も。僕は逃げているだけ。
炎刀も僕は持っているのに、女の子に助けてもらうのは少し恥ずかしい。

・・・そうだ。

「なぁ、雪華。この妖力って、鍛えることができるのか?」

「あ・・・ああ。どうしたいきなり?」

「僕、特訓したいと思ってさ・・・。ちょっとさっきまでは妖怪と戦うってことはしたくなかったけど、雪華に守ってばかりでもダメかな・・・って思って」

「ダメかな・・・ではなく、ダメだ。もし、私に何かあったら一人で戦うこととなる。その時に備えての訓練ぐらいしておけ」

雪華はそういうと欠伸をして机に突っ伏せた。

「だからね・・・」

雪華は机に突っ伏して眠ってしまいそうだった。

「明日、特訓して貰っていい?」

その言葉を聞き雪華は顔を上げた。目はトロンとして、眠そうだ。

「ん・・・まぁいいが。」

「じゃあ・・・もう寝ようかな。今日は影の件とかいっぱいあって疲れたし」

「まだ寝るのか。どこのニートだ」

「ニートじゃないから。刀職人だから!」

僕はそういうと自分の部屋に入り、布団の中に潜った。