* * *
―――――――
「雪華、あの影は一体・・・?」
「あの影か?」
あの影は何なのか。実態が無いようにみえたが、しかし攻撃はあたる。影越しに風景は見えるのだが、そこにいる存在。
「あの影は・・・いわば体を無くした魂とでもいうべきか・・・」
雪華は頬杖をつき、答えた。
「それは、幽霊ってこと・・・?」
「幽霊か・・・。あの影は、もとはこの世界に存在していた人間だった。しかし、死んだときに冥界へ行きそびれた輩だ。死後すぐに冥界に行けば人間の形でいられるのだが、魂だけでこの世界にいると、やがて人間としての実体が無くなってしまい、影になる。もちろん、行きそびれたとしても冥界に行きたいと望めば行ける。だが、あいつらはそれを拒み続けている」
窓から木漏れ日が差し込み、雪華の口元を照らす。雪華は続けた。
「あいつらの目的の、第一は人間の体を乗っ取ること。死ぬ直前に悪事を働けば、地獄に落ちてしまうから、あいつらはこの世界に留まった。そして、地獄に落ちずに新たな体を見つけて乗っ取る。そして・・・今回の件だが、どうやら目的は違うような気がした」
「今回って・・・、僕が今、襲われたこと?」
「ああ。影たちはお前の身体を乗っ取る計画ではなさそうだった。お前の体をかなり傷物にしていたしな。もしお前の体を乗っ取るつもりなら、あまり体に傷が残るような攻撃はしない」
たしかに。あいつらは僕に身体的な攻撃を仕掛けてきていた。木刀で首を絞められたり、あれはあきらかに僕を殺そうとしていた。
「影たちの目的・・・もしかしたら、影は誰かの使いであったかもしれない」
「使いって・・・。影を操って、僕を殺そうとした人がいるってこと?!」
「ああ。影たちには、『紅蓮神門を殺したら、新しい体をくれてやろう』とでもいい、誘ったのだろう」
「そんな・・・、僕、誰かに恨みなんて持たれた覚えないし・・・」
「そうだ。お前は無駄に人がいいからな。変態だが。だから、より、今後の行動には気を付けた方がいい」
「一瞬罵倒された気が・・・」
「気にするでない」
「・・・まぁいいや、気を付けることにするよ」
僕はそう言って風呂場へと向かった。服は雨と泥で濡れてしまっていた。髪も雨の匂いがついており、どうも気持ちよくない。
僕は服を脱ぎ、風呂へ入った。湯船につかると、僕は顔の半分を湯の中へ浸けた。
(極楽極楽~)
そして、吸い込まれるように僕はそのまま眠ってしまった。
「・・・おい、神門。起きろ」
耳元で声が聞こえた。
(ん・・・なんか温か・・・?)」
「神門、さっさと出ろ。お前何分入れば気が済むのだ」
「ん・・・ッッ?!」
僕は慌てて顔を上げた。横にはイライラが表情に出てしまっている雪華がいた。外は暗い。
「僕・・・何分入ってた・・・?」
「知るか。ざっと3時間くらいだ。風呂場で寝るとか、お前死にたいのか」
雪華は腕組みをしながら話す。
「私だって入りたいのだが」
「あぁ・・・ごめん!今出るから!」
僕は体を慌てて起こし、湯船から出た。
「・・・・・・」
雪華は無言で僕を見る。
「ど、どしたの?雪華・・・」
自分自身の体を見てみる。
「あッ・・・」
・・・・・・
(タオル巻いてねーーーーーー!!)
僕は慌ててもう一度湯船につかる。
「・・・・・・てめぇ」
雪華は口調が明らかにイライラし始めていた。僕のことも、お前からてめぇになってしまっている。
目は僕のことを見下すような目だし、口元は明らかに引き攣っていた。
「いや、あの、ね?見せびらかしたかったわけじゃないんだよ?ただ気づかなかっただけで!」
「うるさい露出狂」
バコンッ
雪華は思い切り僕の頭をぶん殴ると、風呂場から出た。
―――――――
「雪華、あの影は一体・・・?」
「あの影か?」
あの影は何なのか。実態が無いようにみえたが、しかし攻撃はあたる。影越しに風景は見えるのだが、そこにいる存在。
「あの影は・・・いわば体を無くした魂とでもいうべきか・・・」
雪華は頬杖をつき、答えた。
「それは、幽霊ってこと・・・?」
「幽霊か・・・。あの影は、もとはこの世界に存在していた人間だった。しかし、死んだときに冥界へ行きそびれた輩だ。死後すぐに冥界に行けば人間の形でいられるのだが、魂だけでこの世界にいると、やがて人間としての実体が無くなってしまい、影になる。もちろん、行きそびれたとしても冥界に行きたいと望めば行ける。だが、あいつらはそれを拒み続けている」
窓から木漏れ日が差し込み、雪華の口元を照らす。雪華は続けた。
「あいつらの目的の、第一は人間の体を乗っ取ること。死ぬ直前に悪事を働けば、地獄に落ちてしまうから、あいつらはこの世界に留まった。そして、地獄に落ちずに新たな体を見つけて乗っ取る。そして・・・今回の件だが、どうやら目的は違うような気がした」
「今回って・・・、僕が今、襲われたこと?」
「ああ。影たちはお前の身体を乗っ取る計画ではなさそうだった。お前の体をかなり傷物にしていたしな。もしお前の体を乗っ取るつもりなら、あまり体に傷が残るような攻撃はしない」
たしかに。あいつらは僕に身体的な攻撃を仕掛けてきていた。木刀で首を絞められたり、あれはあきらかに僕を殺そうとしていた。
「影たちの目的・・・もしかしたら、影は誰かの使いであったかもしれない」
「使いって・・・。影を操って、僕を殺そうとした人がいるってこと?!」
「ああ。影たちには、『紅蓮神門を殺したら、新しい体をくれてやろう』とでもいい、誘ったのだろう」
「そんな・・・、僕、誰かに恨みなんて持たれた覚えないし・・・」
「そうだ。お前は無駄に人がいいからな。変態だが。だから、より、今後の行動には気を付けた方がいい」
「一瞬罵倒された気が・・・」
「気にするでない」
「・・・まぁいいや、気を付けることにするよ」
僕はそう言って風呂場へと向かった。服は雨と泥で濡れてしまっていた。髪も雨の匂いがついており、どうも気持ちよくない。
僕は服を脱ぎ、風呂へ入った。湯船につかると、僕は顔の半分を湯の中へ浸けた。
(極楽極楽~)
そして、吸い込まれるように僕はそのまま眠ってしまった。
「・・・おい、神門。起きろ」
耳元で声が聞こえた。
(ん・・・なんか温か・・・?)」
「神門、さっさと出ろ。お前何分入れば気が済むのだ」
「ん・・・ッッ?!」
僕は慌てて顔を上げた。横にはイライラが表情に出てしまっている雪華がいた。外は暗い。
「僕・・・何分入ってた・・・?」
「知るか。ざっと3時間くらいだ。風呂場で寝るとか、お前死にたいのか」
雪華は腕組みをしながら話す。
「私だって入りたいのだが」
「あぁ・・・ごめん!今出るから!」
僕は体を慌てて起こし、湯船から出た。
「・・・・・・」
雪華は無言で僕を見る。
「ど、どしたの?雪華・・・」
自分自身の体を見てみる。
「あッ・・・」
・・・・・・
(タオル巻いてねーーーーーー!!)
僕は慌ててもう一度湯船につかる。
「・・・・・・てめぇ」
雪華は口調が明らかにイライラし始めていた。僕のことも、お前からてめぇになってしまっている。
目は僕のことを見下すような目だし、口元は明らかに引き攣っていた。
「いや、あの、ね?見せびらかしたかったわけじゃないんだよ?ただ気づかなかっただけで!」
「うるさい露出狂」
バコンッ
雪華は思い切り僕の頭をぶん殴ると、風呂場から出た。


