大江戸妖怪物語


高さは約10メートルほどだろうか。家々が少し小さく見える。

「紅蓮断罪ぃぃぃ!!!」

僕は太刀に炎を纏わせ、重力に従いながら思い切り影に向かって刀を振り下ろした。
すると、影の2体に当たった様だった。僕はその影たちに連続切りを食らわす。炎刀が相手を斬るたび、火の粉が散った。

影2体は崩れ落ちるようにして消えて行った。あと6体!

「ちっくしょー・・・。何だってんだ!」

僕は愚痴をこぼしつつ、次の1体を斬りにかかる。影は双剣使いなのか、素早く攻撃してくる。

ガキィン!


双剣を十字の形にして、また僕を抑え込もうとしてきた。僕は刀を横にし受け止める。刃と刃が擦れる不協音が響く。するとまた木の棒を持った影が僕の後ろに回り込んだ。影が木の棒を僕に当てようとした。

「二度も同じ手に乗るかっつーの!」

僕は一気にしゃがみ、木の棒の攻撃をギリギリでかわす。頭上スレスレを通った木の棒は僕の髪の毛を掠めた。

双剣使いは僕が急にしゃがんだせいで、バランスを崩した。それを見計らい、双剣使いの影の左胸に太刀を突き刺す。影が悶えた。

「おらあああああ!!」

炎を纏った太刀に、さらに強烈な念を入れ、炎を強くする。影は刀を抜こうと必死だった。
すると木の棒を持った影は、また僕を襲おうとしてくる。

(しつけぇんだよ!)

太刀を双剣使いの胸に挿したままにし、木の棒を持つ影に回し蹴りした。恐らく頸椎に入っただろう。(影に頸椎あるか知らんが)崩れ落ち、消えた。

僕はすぐ双剣使いの方に向き直る。すると、双剣使いは胸に太刀が刺さったまま2つの剣で攻撃を開始した。最後の足掻きか。

そのめちゃくちゃな攻撃をかわして、僕は太刀を引き抜いた。そして、首辺りから足にかけて、思い切り斬った。


すると残りの4体が本気になってしまったのか、攻撃の速度が増してしまった。
僕はまた押され気味になる。

「ッ・・・!」

金属音が耳を刺激する。

その時、僕はぬかるんだ地面に足をとられて、体の軸がずれた。

「うげッ・・・・・・」

気が付くと影が後ろに回り込み、木刀のようなもので僕の首を圧迫する。人間は首のある場所を潰されると声が出ないと聞いていたが、まさにその通りだった。

「だ・・・ぐぅッ・・・」

声を出そうにも、声にならない声しか出ない。その間にも木刀は僕の首を圧迫し続ける。頭がくらくらしてきた。酸欠なのか、死の前兆なのか。

目の前に別の影が来る。なにやら、スプーンのようなものを持っていた。するとその影は、僕の左の瞼を思い切り開けた。

(なにするつもりだッ!)

心ではそう思うが、抵抗できないし声も出ない。すると影は僕の左の眼球に向かって徐々にスプーンを近づけてきた。
ゆっくり、ゆっくりと。

恐怖に駆られ、意識を失いかけたその時だった。


ガツッ!

鈍い音が響き、スプーンを持った影は崩れて消えた。

「何やってんだお前は。眼科検診ごっこか?楽しそうで何よりだ。しかし、今日は目の愛護デーではないのだが」

「雪華ぁぁうわああん」

崩れた影の頭らしきところに、雪華の足があった。どうやら影目がけて踵落としをしたらしい。