「・・・多分か」
雪華は立ち上がるとお茶を汲みに行った。
「まぁいい。彼女が大体二十代であると判明しただけでいい」
お茶を汲む音が聞こえる。雪華はお茶にハマっているのか、よくお茶を飲む。
「・・・ところでだ。その箱みたいなもの、托鉢僧に渡していないがいいのか?」
雪華は僕の横を指差す。箪笥の横にポツンと置かれた・・・風呂敷に包まれた・・・。
「・・・忘れてたぁぁぁッッ!!!!」
僕はその箱を持ち、雨の降っている街へと飛び出した。しかし、もう托鉢僧は、そこにはおらず、橋の周りは静けさに満ちていた。
(・・・人の気配がしない)
雨だからか、辺りの空気は淀んでいる。しかし・・・これはおかしい。
江戸は人口が多いから、雨が降ろうが何があろうが、必ず一人くらいは道にいてもおかしくないのだが・・・。人っ子一人いない。また、この江戸と言う街が、なにか別の街に思えてきた。
僕は背中に寒気がした。
(誰かに・・・見られてる・・・!)
その寒気は、何者かに見られている寒気だった。誰だ・・・?僕は一旦家に帰り、箱を置いて、もう一度街へ出る。
やはり、人はいない・・・。
(少し先へと歩いてみよう。もしかしたら、誰かいるかも)
僕はまた甘深楽へ行くことにした。甘深楽ならアズ姐もいるだろうし、落ち着けるだろう。
僕はドシャ降りの雨で増水した川にかかる橋を渡り、甘深楽へ向かった。
(閉まってる・・・)
なぜか甘深楽は閉まっていた。アズ姐がいる気配もない。少し歩いたが、結局誰にも会わなかった。僕は、何かがおかしいと感じていた。
僕は来た道を戻りはじめた。
(傘持ってくりゃよかった・・・)
僕はずぶ濡れになりながら橋を渡っていた。
その時だった。
シュンッ・・・!


