大江戸妖怪物語


眸の目は、雪華に向かった。

「それにしても美人な女性を連れて歩いちゃって~!もしかして彼女とか?!?!きゃぁぁ~~~~♪♪♪」

「い・・・いやいや、なな何を言って「そんなわけないだろう。こんなミジンコ」

無表情のまま雪華が発した言葉は僕の心を刺した。この人、精神殺人鬼じゃないのか?
僕がメソメソする様子を見て、雪華は溜息をついた。

「謝るわよ」

「ほんとに?」

「ミジンコに」





・・・・・・





「うぅぅぅ・・・(泣)」


「神門・・・大丈夫・・・?」

半泣きの僕の背中を摩ってくれたのは眸だった。

「ありがとうぅぅぅ」

「お前、女々しいな・・・」






・・・・・・







「ところでね、神門にお願いがあります!」

落ち着いた僕に眸が話しかけてきた。あぁもう可愛いよ。うん。


「橋を渡ったところに、笠を被った人がいるの。それでね・・・?この箱を届けてほしいの・・・」

「箱?」

それは赤い風呂敷に包まれていた。大きさは、お節の時に出る重箱くらいだった。

「いやいや、橋渡って届けるだけでしょ?何も僕じゃなくても・・・」

「ごめん!これから急ぎの用事があるの!じゃあねッ!!」

「あ、ちょっと・・・眸ッ!!」

眸は僕たちに手を振って、走って去っていった。

「橋を渡ったところ、ねぇ・・・」

僕が橋をみると確かに、笠を被った托鉢僧のような人が立っている。

(取りに来ればいいだろ!)

僕は眸とジッとツッコミ待ちの托鉢僧に突っ込んだ。

「・・・雨が降りそうね」

雪華は空を見て、ポツリと呟いた。

「・・・やっべ!売り物の刀、外に出しっぱなしだ!!」

すぐに雨が降り出し、辺りの道を黒く濡らした。
雨の匂いが充満し、遠くには雷鳴が響いている。

「水に濡れるとヤバい!早く家に戻らないと!」

僕は慌てて家に戻った。橋を渡り、托鉢僧の前を通り過ぎる。

僕はすっかり届け物のことなど忘れていた。