―――――― 「甘深楽?」



僕が連れてきた店、それは甘深楽だった。
あの絡新婦の事件以降、店には顔を出していなかった。

「あらー神門くん!久しぶりね!・・・あら?」

アズ姐は僕の横にいる雪華に気付き、首を傾げた。

「久しぶり、アズ姐。この子は・・・」

「自分で名くらいは名乗れるわ。私は雪華。どうぞよろしく」

「せ・・・・・・っか・・・?」

アズ姐の顔が一瞬ぎこちなく歪んだ。しかし、いつものアズ姐の笑顔に戻る。

「・・・雪華、ちゃんね。私は小豆よ。よぉし、今から特別スウィーツ作るから、椅子に腰かけててね」

アズ姐は料理を作り始めた。やはり、手際がいい。まるで楽器を奏でるような・・・。

「神門、質問があるのだが・・・」

「ん、なに?」

「あの彼女のことなんだけど・・・・・・、・・・やっぱりいいわ」

「ちょッ?何?すごく気になるから先言ってよ!」

僕は雪華を腕で小突く。

「なんだ??(黒)」

その冷たい声は僕の心臓を突き刺すのには適していた。
トキメキではない。ドクドク・・・・・・・。(血液らしき音)

「はぁ~い!お待ちどう様ッ!スペシャルかき氷、練乳宇治金時よ!めしあがれ!」

僕たちの前に出された二つのかき氷。緑がかった氷に練乳がかかっている。

「宇治金時に練乳?合うのかな・・・?」

「騙されたと思って食べてみて!」

僕はスプーンで一口食べてみた。

(・・・・・・!!!!)

「・・・おいしい」

はじめにその言葉を発したのは雪華だった。

「少々苦みのある抹茶テイストに絡む上質な練乳、その二つが互いにいいところを発揮している。練乳が加わると、シャキシャキしているところとしっとりまろやかなところと・・・。二種類の触感が味わえ大変おもしろい。さらに小豆が良いアクセントだ。」

(お前は食べ物レポーターか!!)

僕は心の中で突っ込んだ。だが、まさしく雪華の言った通り、意外とマッチする。

「ありがと。まるで食べ物レポーターみたいね♪そういってくれると助かるわ」

アズ姐の笑顔が雪華へと向けられた。

(笑うと笑い皺がな、目じりがクシャッとなって可愛いんだよな~。デュフフフフ~)

「神門、鼻の下が伸びている。気色悪い」

「え、まじで?!」

僕は慌てて鼻から下を手で覆った。アズ姐もクスクス笑っている。

「神門君ってば、おいしいからって鼻の下伸ばしちゃダメよ」

いや、そういうことではないんだが・・・