「そうらしい・・・。えーと、『連続殺人事件!犯人は死んだのか?!事件最近一切起こらず!』・・・だと」

「まぁ・・・、確かに、死んだわね・・・」

「でも、警察は犯人捜しを続行するって書いてあるよ?どうする?言うべきなのかな・・・」

雪華は目線を伏せ、腕組みしながら考え込んでから言った。

「いや、言ってはならないな。・・・妖怪が街へ繰り出し、人殺しをしていた・・・そんなことを言えば江戸がパニックになるだろう。ここは、警察には申し訳ないが、黙っていた方がいいと思うが・・・」

たしかに・・・。妖怪が出たと言ったら、パニックになるな。それ以前に信じてもらうことすら難しそうだけど・・・。

「まあ、時期をみて相手によって言うわ」

「相手って・・・?」

その質問に雪華は答えなかった。無視されたというべきか・・・。

「・・・そうだ、雪華に聞きたいことがあるんだ」

僕は自分の手を雪華の前に差し出した。そして、心の中で、炎よ出でよ、と念じた。僕の掌に火が灯った。

「あのさ、これ人間業じゃないよね?
・・・まさかさ、僕は妖怪になったの?」

「妖怪ではないわ。安心して、妖力が宿っただけだから」

「安心できるかぁ!妖力って、妖力ってなんぞや!!」

「意外と安心よ。殺されそうになったら、相手を燃やせるじゃない。防犯対策よ。常日頃、防犯ベルを持ち歩くよりマシでしょ」

「そんなグロいことできるかああああ!」


僕は右手の人差し指で、雪華をビシィッと指差した。
雪華はつまらなそうな顔をしながら少し冷めたお茶を啜った。

「甘いものないかしら」

「え?僕、ガン無視??」

雪華はそういうなり立ち上がって、戸棚を開けた。
戸棚には煎餅とおかきがあった。

「残念ね。これは甘くない」

雪華は戸棚をピシャリと閉めた。

「そんな甘いものなんて・・・」

僕は腕組みしながら考えてみた。

・・・あ。

「あるわ」

「あるの?」

一つ思い当たる店。

「雪華、ちょっと出かけようか。すぐつくからさ」

「え?どこの店なの??不味かったら殺す」

「・・・スイーツ店に行くのに、そんな物騒なこと言わないでくれる・・・?」

雪華は興味津々(?)の様子で、僕のあとについてきた。