春から夏に移る頃。
じりじりと太陽が強くなり始める頃。
俺の中では一番嫌いな季節。
梅雨がやってきた。
「…熱い。」
イライラしている理の声を聞きながら、
俺は理の背中を押した。
「熱いって言うと、余計に熱くなるよ。」
「お前のそのサラっとしてるとこが余計にムカつく!!!」
…地雷を踏んでしまった。
今は体育の時間。
柔軟体操、真っ最中だ。
ぐぐぐ…と理の背中を押す。
足を広げてやるこの体操、痛いんだよね。
「痛い…」
「……。」
次は俺が押される番か…。
「痛いって……!」
嫌だな……。
「痛いって言ってんだろうが!!!」
「あ、ゴメン、ナサイ。」
「何ボーっとしてんじゃ!痛いって言ったら力緩めろや!!」
理は怒るときだけ関西弁になる。
…なぜだ。
「聞いてんのか!!」
「あ、ハイ。聞いてます。」
「絶対聞いてなかったよな!!??絶対聞いてなかった!!
そもそもお前は~…」
長い理のお説教のおかげで、俺は柔軟体操をやらなくてすんだ。
今日だけは理の長いお説教に感謝しよう。