私の方はすぐに階段を下りて、小出さんの後を追い始める。

 小出さんの姿を目にしたのはホームの中ほど。

 近くの柱に背中を付けて、ボーっと立っている。

 私は電車を待つ人々の列に並び、ジッと小出さんの様子を観察した。

 けたたましいタイフォン(列車の警笛)が鳴り響いて、電車が入って来た。

 電車が停車するとドアが一斉に開き、大勢の乗降客でホームはごった返す。

 私は小出さんの後を追うようにして、同じ乗降口から乗り込んだ。

 夕方のラッシュ時なので、車内はすっごく込んでいた。

 私はドア付近で、小出さんは少し離れた所で立っている。

 動き出した電車。

 回りは大勢の人たちで一杯だから、丁度良いカモフラージュになる。

 オシャレな柄のベレー帽と大きなマスクで素顔を隠している私。