「涼那?」
「変な化け物…」

目線は床にあったから表情は見えなかったけれど、
声は心配そうな声をしていた。
ぽん、と頭を撫でられて溜まっていた物が溢れるかのように泣いた。
オウヤ君は何も言わずに傍にいてくれた。
これもきっと彼にとっては“守る”事なんだろう。

「化け物か…そんなに怖い夢見るなんてお前も大変だな」
「夢じゃない…さっきも、いた」
「そういうことにしてやるよ」

珍しく優しいオウヤ君。
さっきの冗談に似た言葉と言い…おかしい。何処か頭をぶつけたのか、
それともこれは何かの作戦なのかはよく分からないけれど、
今は怖さから逃れる為にこうしているしかなかった。
ふと見上げてオウヤ君を見てみた。何時にも増して険しい表情。
何かを考えているような、
誰かを憎んでいるような静かなる何かが、目の奥にある気がした。