運ばれた彼はそのまま治療をする為の部屋へと消えた。
私は彼を待つ事にした。
待ち始めてから後になって思う事が出来た。
どうして私は名前も知らないあの彼を
待たなければいけないのだろう。
別に私は無関係であって、ただの第一発見者に過ぎないのだ。
でもやっぱり彼の事が気になる。
だからなのだろうか?帰ろうと思っても帰れなかった。
きっと身元くらいはもう分かっているのだろうから、
家族の人が来たら帰ろうかと思う。その方が良い。
来るまでの間は心細くならないように私がいなきゃって、そう感じた。

だけど、数時間して彼が病室に移されても
家族らしき人はやってこなかった。
まだ身元が分からないのだろうか?
名前の分かるようなものを、彼は持っていなかったのだろうか?
私が彼の知り合いだと思ったのか、お医者さんが彼の名前を聞いた。
だけど私にも分からなかった。
不思議だらけだったのだ。彼について。
こっそり誰かが話しているのを聞いた。