墜ちた羽根

「さーて、今日は何処を散歩しようかな」
「何しているんだお前」

聞きなれた声がして振り向けば、オウヤ君がいた。
何時にも増して不機嫌そうな表情。
やっぱりあんな単純な脱出じゃ逃げられないって事か…。

「戻るぞ」
「嫌だ」

折角外に出られたのだから、もう少し散歩をしたい。
それが私の本音。
逃げないようにと強く腕を掴まれていて、逃れられない。
どうすればいいのだろう。
…咄嗟にオウヤ君の足を踏んだ。
怪我をしているから軽く踏んでもかなりの激痛だと思う。
その証拠に物凄く苦痛な表情を浮かべている。
掴まれた腕が開放され、そのまま走り出した。

「待て…」

そんなオウヤ君の言葉も私には届かなかった。