墜ちた羽根

妙にぶっきらぼうな言い方。
でもいないだなんて哀しいような。辛くないのかな?
深く聞いてみようと思ったけれど、
彼が傷つくんじゃないかと思いやめた。
何か他に話題を出さないと。
でも何も思い付かなかった…あ、お医者さん呼んだ方が良いのかな?
とりあえず呼んで来よう。

「私、お医者さん呼んでくるから…逃げないでね?」

そう言い残して私はその場を後にした。
こう言わないと、今の彼は本当に逃げてしまいそうだったから。

お医者さんを連れて来た時、
ちゃんと逃げないでいてくれた事に安心した。
そしてやはり名前を聞かれていた。
最初は私と同じように“オウヤ”としか答えていなかった。
だけどフルネームで答えろと言われ、また少し考えて

「“コウチ オウヤ”だ」

と言った。此処で私は彼のフルネームを初めて知った。
“コウチ オウヤ”…少し綺麗な名前だと思った。