恋愛不向きの彼の愛し方

カウンターより一段高い場所から小首を意味もなく傾げて女の子全開の、同性からしたら声だけでもイライラさせるタイプ。


男と女の前で態度や声が違う典型的な女性だとすぐにわかる。


「あれ?今日は一人?」


蒼空さんが聞いているから常連客なのかもしれない。


「あ、今、会社から電話がきたようで終わったら来るみたい」


「そう。じゃあ、今日はあっちでいい?」


多分、私達がいて、席は空いているものの、詰めて座らないといけないので気を遣って言ったようだ。


「え~、私も海斗さんや蒼空さんと楽しくお話ししたいよ。いいでしょ、ココ、二つ空いているもん、ね?」


いやいや、蒼空さんは別として海斗さんは私達の連れなんですが……。


杏里のそんな声が聞こえてきそうだ。


「え~、俺は無視なの?冷たくな~い?」


哲也さんが女性の口調を真似て苦笑しながら蒼空さんを見ていた。


横の海斗さんからは盛大な舌打ちが聞こえたのは気のせい……じゃない。