恋愛不向きの彼の愛し方

「あ~わかるわかる。私、怜香だったらいいや。怜香のこと大好きだし」

少し重くなっていた空気を変えたのは、ニコニコ微笑みを浮かべている杏里で。


「マジ!?俺と気が合う女の子初めてで、俺、ちょっと感動!どう?俺と付き合ってみる?」


なんて言い出した蒼空さんと、


「ダメです。今、蒼空は俺のです」


真面目な顔をして止めるもう一人のバーテンダーのやり取り。


「何だよ、颯太(ソウタ)。やっと、思いが通じたのにもう失恋か。俺が慰めてやるぜ」


哲也さんが、笑いながらカウンターを叩いてこの状況を楽しんでいる。


アハハと同様に笑う杏里は、私に熱い視線を送ってきて、もう、カオスだ。


そして、それを遮ったのは、海斗さんでも私でもなく、甲高い声。


「こんばんは。何だか楽しそうですね。海斗さんが、女の子連れてきているのも珍しい」


振り返って、女の子を見た瞬間私と杏里は顔を歪めた。