(どうしたもんかなぁ~)

優希は、出入り口付近に座り、園庭で遊ぶ子ども達を見る
園児が楽しむ砂遊び、鬼ごっこ…別に嫌いではない
むしろ好きなのだが…

(子ども園の砂場って…戦場やん)

基本的に子どもは自己中心なものだ
そんな子どもが集まる所は喧嘩が起こる…ということは、簡単に想像できる
実際に今、砂場でスコップの争奪戦が行われている
わざわざ巻き込まれるような所に行くなど、面倒で仕方ないのだ

「あら、優希ちゃんは遊ばないの?」
「うん、物の取り合いに巻き込まれるんわ、遠慮するわ」
「へ…?」
「え…あ…えーっと
ほな、絵本読んでくるわ!」

ボーっと園庭を見て考え事をしていると、いつの間にか保育士が隣にいたのだ
それに気付かず、問いかけに素のまま返答してしまったのだ
保育士が驚いてポカンとしている間に、絵本コーナーへと逃げる
保育士が驚くのも無理は無い
3歳の子から、あんな返答を聞くなど、誰も想像することは出来ないだろう

(あっぶなぁ~…思わず素が出たわ)

絵本コーナーには、誰もおらず静かな空間になっていた
優希はストンと座り、適当な絵本を取って読む

(…はぁ…普通の本が読みたいなぁ…)

絵本が嫌いなわけでは無いのだが、何か物足りない
家ならば、絵本以外にも沢山本があると言うのに…
今は叶わない願いに、優希がガクッと肩を落とす

「これ、ボクもみる!!」

静かな空間が一瞬にして壊され、パッと優希の手にあった絵本が姿を消す
ふと視線を上げると、1人の男の子が絵本を持って嬉しそうな顔をしている
優希は、その本に執着も何も無いので、特にその行動を気にとめなかった

「ずるい!わたしもみる!」
「これ、ぼくのだよ!」
(…いや、自分が先に読んでたんやけど…)

目の前で繰り広げられる、絵本争奪戦を見ながらそう思うが
2人の子どもに、優希の思考が届くことは勿論無かった