眉根を微細に寄せたまま、カズヤさんを見下ろす私にまた意地悪そうな微笑を浮かべる男性。
「ほら、君も自己紹介しなよ。」
「…貴方、知ってるじゃないですか。」
「いいから。」
そう言われ何となく抵抗があったが、ぼそぼそと自分の名を音にした。
「…篠宮菫です。」
「スミレ、字は?」
「普通に、菫の花の菫です。」
そう言えば、ニッとまた口角を綺麗に持ち上げて笑うカズヤさん。
「菫ちゃんね」と呟くと、カズヤさんは徐に席を立ち上がる。
「じゃ、また。」
それだけ言い残し、ひらひらと手を振った後ろ姿はやはり三浦さんとよく似ていた。
カズヤさんが隣を通り過ぎた瞬間、香ったのは柑橘系。
確か、私のアパートの前にカズヤさんが待ち伏せしていた時つけていたのは三浦さんのシトラスだった。
なんて、最低な人だ。


