「祐吾くんっ!これ忘れて行ったよ!」 「…ああ。わざわざ持って来なくても…。 明日でいいのに」 「だってぇ。明日欲しいから。 ちゃんと書いて来てね」 「…うん」 ――玄関先で交わされている会話をリビングから聞き耳を立てて盗み聞く。 ――祐吾に彼女が出来た。 彼はまだ十一才。 私が子供の頃にはあり得ない話だ。 相手は誰なんだろう。 「じゃあね、祐吾くん」 「うん。気を付けて帰ってね」