「なんか…ありがとな。
なんか溜め込んでたこと麻木に話したら、すっきりした。
麻木の言葉にも、すげぇ勇気もらったし」




前髪を触りながら、あたしと目も合わさずにお礼を言う彼は、きっと照れているのだろう。



夕日で染められた横顔は、なんだかとても綺麗に見えた。



伸一の中で何かが変わったのは、確かなことかもしれない。




「そんな……、あたしは思ったことを、そのまま言っただけだよ。
それに勇気をもらったのはあたしの方だから…。
こちらこそありがとう」




お互いにお礼を言うとそれもまた照れくさくて、一緒に笑いあった。




……自分の夢を教えるのは、なんだか照れくさくて。

でもなんだかとても、教えたくなるから不思議なんだ。




「佐藤君も、頑張ってね!
あたしもお母さんを説得するの頑張るから」


「おう!お互い頑張ろうな!
……約束だぜ?」




差し出された小指は、同じように夢を追う者同士の誓い。



自分の小指を絡めれば強い力が返ってきた。




「うん、約束ね!」




目指したものが違っても、歩いた道の先が枝分かれしていても。



同じように何かに向かっている仲間がいるだけで、自然に勇気を分けてもらえる。



だから、頑張れる。

そう思えていたんだ。



二人のこの時間も関係も、このままずっと同じだと信じていたから――。



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