「なんで…分かった?」
「だって佐藤君、言ってたでしょう?
自分が好きなことを選べば比べられて、惨めな思いをするって。
…それって、好きなことがあるけど比べられるのが嫌で、選べないってことだよね?」
あくまでも推測の言葉を投げかけて、不安に思いながら伸一の言葉を待つ。
「……なんか、ほんと…。麻木には敵わないな…」
伸一は前髪を手でくしゃりと掴むと、そのまま俯いてしまった。
「…麻木の言うとおりだよ」
その言葉にやっぱり、という思いが浮かぶ。
あぁ…。
やっぱりそうだったんだね。
伸一が親のことを話してくれたときの苦しみを堪えるような顔が、頭から離れなかった。
それがあまりにも、自分と似ているなって感じたから。
好きなことを自由に選べない。
堂々と胸を張って言うことさえ出来ない。
そんなもどかしい苦しみを知っているから、伸一の秘めた気持ちに気付くことが出来たんだ。
「…どうして俺って、こんなにも無力なんだろ」
頬杖をついて外を見つめる伸一の横顔は、まるで夕暮れどきのように儚げで寂しく見えた。



