光を背負う、僕ら。―第2楽章―




「俺さ、兄貴が二人いるんだけど。二人とも俺と違ってすげぇ賢いんだ。
高校も大学も、ここらでは有名なところに進学してるよ。
親は直接口にはしないけど、小さい頃から俺はそんな兄貴たちと比べられてた」




ぽつりぽつりと伸一が話し出した家の事情は全く知らなかったことばかりで、彼女でもないただのクラスメートのあたしが聞いていいものなのかと不安にもなる。



でも伸一が言葉を選びながら真剣に話してくれるから、あたしも同じ気持ちで話を受け止めようと思った。




「親はさ、進学先も夢も、自分の好きなものを選べばいいって言ってる。
…でもさ、選べるわけねぇよ」


「どうして?」


「親が心からそう思ってないのが分かってるからだよ。俺の親はいつだってそうなんだ。
口では“好きにしていい”とか“自由に選べ”とか言うけど、本当は兄貴たちと同じ高校に行ってほしいって思ってる。
そう思ってるくせに全然そんなこと俺には言わなくて、内心では出来のいい兄貴たちと比べてるんだよ。
自分の好きなこと選んだら比べられて惨めな思いするの分かってるから、絶対自由になんか選べない」




最後の方は早口で話すと、机に顔を伏せてしまった。



だから彼が今どんな表情をしているのか出来なくて、想像するしか出来ない。