「…ありがとう。相談に乗ってくれて。佐藤君の話聞いたら、反対されても頑張れる気がする!」
躊躇っていたわりには結構真剣に相談してしまったから、なんだか照れくさい。
だけどちゃんと、心からお礼を言えた。
伸一も力になれたことが嬉しかったらしく、頬が緩やかに綻んでいく。
「おう、頑張れ!
俺が麻木のファン第1号になって、ずっと応援してるから!」
「ははっ、ファンだなんて…。
まだまだ未熟な演奏なのに大袈裟だよ」
「おまえはそうやって謙遜してるけど、上手いのは俺が保障するって!」
あたしのピアノが上手いのか下手なのかは、何度考えてもよく分からない。
むしろそんなこと、今はどうだっていい。
――ただ。
“上手い”って。
“ファン第1号”って。
“応援してるから”って。
伸一がそう言って笑ってくれるのが、この瞬間は何よりも嬉しかったんだ。
もう一度「ありがとう」と言えば、伸一はまた同じように笑っていた。



