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「…来週中に提出、か」
ピアノに向き合うように座りながら、今日のホームルームで渡されたまだ真っ白な進路希望調査票をじっと見つめた。
それを持つ手とは逆の手で鍵盤に触れれば、当たり前のごとくポーンと音が鳴り響く。
毎日聞き慣れた音だというのに、気分次第でその音程はとても低く聞こえた。
「一緒に頑張ろう」と、明日美と流歌と約束したまではいいけれど、お母さんとの問題はすぐに解決できるものではない。
二人はもう着々と夢に向かって歩き出しているというのに、あたしは歩いているつもりでも実際は一歩も進んでいないような感覚だ。
「…どうすればいいんだろう」
「何が?」
「っ!!」
独り言のつもりで呟いた一言に返答があったことで、思った以上に驚いてしまった。
声も出せないまま勢いよく振り返ると、背後にはもう一つの悩みの種である人物が立っていた。
「あっ、わりぃ。驚かしたか?」
「おっ、驚くに決まってるよ!一体いつからそこにいたの!?」
「え……結構前からいたんだけどな。何回声かけても上の空みたいだから、それ以降は黙ってたけど」
「そ、そうだったんだ…」
そんなに前から伸一がいたなんて、全然気付かなかった。
なんだかこれじゃあ、色々と心臓に悪すぎるよ。



