光を背負う、僕ら。―第2楽章―




「では、お願いします」


「――はい」




試験官の先生達に一礼してから鍵盤に指を添えた。



そしてそこから始まるのは、あたしの音楽の世界。



まずは課題曲の中から選んだモーツァルトのソナタ第8番を弾いた。



緊張していたわりにはすんなりとテンポに合わせて指が動いてくれる。



暗譜してきた通り、間違えずにメロディーは進んでいった。


気持ちも音色とシンクロして抑揚する。



途中で演奏を止められることも予測していたけど、止められたのは曲の後半に入ったあたりだった。


思ったよりも長く演奏を聞いてもらえたと思う。


果たしてそれが良いのかは分からないけれど……。



続いて演奏したのは、自由曲に決めたラヴェルの水の戯れ。


課題曲とは違う繊細なメロディーを落ち着いて弾く。


こっちも順調に進んでいったけど、さっきよりも早く演奏を止められた。



でも……悔いはない。



たとえ演奏した時間が長くても短くても、あたしが弾くピアノの音には変わりないから。



この時間だけでも、十分あたしらしい演奏は出来たと思うんだ。




「ありがとうございました」




少しだけ清々しい気持ちで部屋をあとにする。



すると外の椅子には、次の番を待つ小春ちゃんが堂々とした表情で前を見据えて座っていた。



ドアから出てきたあたしに気付いて、微かに笑ってみせる。



言葉は交わさなくても、お互いの気持ちは十分伝わってきた。