光を背負う、僕ら。―第2楽章―




「正直言うとこの選択が正しかったのか、今も分からねぇんだ。ずっと付き合ってた方が、小春は喜んだかもしれない。でも最後に俺の背中を押して別れてくれたから、これで良かったんだろうなとも思えるし……」


「たぶん、正しかったと思うよ。だって優しさは、ときには人を傷付けることもあるから。だから中途半端にしたままじゃなくて、きちんと決断したことを小春ちゃんは受け止めてくれた気がするよ。……あたしの、想像だけど」




小春ちゃんは小春ちゃん自身で、伸一の気持ちの変化も別れも受け止めていた。



そういう強い姿を知っているから、この決断はきっと正しかったと思うんだ。



曖昧な優しさだけをもらい続けるのは、小春ちゃんもつらかっただろうし。


あたしも伸一の中途半端な優しさには悩むこともあったから、その気持ちはよく分かる。



伸一はあたしの言葉を聞いて、どう思っただろう……。


何かアドバイスを出来るような立場ではないから不安になる。



でもそんな心配を余所に、目の前の表情がふわりと安心したように緩んだ笑顔になった。




「……そうだな。中途半端なんかよりずっと良いよな。俺が正しかったって思わないと、小春に失礼だしな。それに……麻木にも」




ほとんど脈絡もなしに突然自分の名前が出てくるものだから、心臓が喉から飛び出そうになった。



でも緊張してしまうと大事な言葉を聞き逃してしまいそうだったから、必死に表情を引き締めて動揺を隠す。




「自分の気持ちに気付いたら、俺すげぇ勝手だなって思ったよ。自分から麻木の告白を断っておいて、そのあとに自分の気持ちに気付いたんだからな。何で告白断ったんだろうって後悔もしたし、達也と付き合ってるって噂が出たときは嫉妬もしたんだ」




照れているようで、少し拗ねているようにも見える伸一の表情は新鮮だった。



伸一にそんな表情で見られたことがなかったから、嬉しいような小恥ずかしいような気持ちになって心が混乱しそう。